腰の高さの向日葵が、一面に広がっていた。太陽はちょうど頭上に位置している。

 景色をよく見渡すには麦わら帽子が邪魔だと感じ、ゼンさんは風が強く吹き抜けた際に押さえるのも面倒だと思って取った。カワさんも、習うように麦わら帽子を手に持った。

 向日葵園の中央の通路まで入ったところで、ゼンさんとカワさんはようやく歩くペースを落とし、立ち止まった。ここに立っていると、視界一面に広がる向日葵だけが目に留まって、それが青い空の向こうまで続いているようにも感じられた。

「ミトさん、向日葵だ。俺たち、ここまで来たんだぜ」

 ゼンさんの声は、思わず少し上ずってしまった。カワさんもまた感動したように瞳を潤ませて、けれどしっかりと頷いて、ミトさんが座る車椅子を通路の中心まで押し進めた。

 喉元が震えて、すぐに言葉が出て来ないようだ。ミトさんはしばらく、しっとりと濡れた瞳を見開いていた。カワさんが、彼女に話し掛けた。