「まぁ、すごいわ」

 喜ぶミトさんのそばで、ゼンさんは名前も分からない左右の花を見渡した。マサヨシは彼らを誘導しながら、パンフレットに記載されてある地図へ目を落とした。

「一番奥に、目玉として向日葵園がある。一番敷地を取る花みたいだ」

 マサヨシは続けて「父さん」とゼンさんを呼び、腕を進行方向に真っ直ぐ突き出した。ゼンさんはそちらを見やって、思わず「おぉ」と言ってしまった。

 そこには三つの通路を隔てて、淡い黄色の絨毯が奥まで広がっていたのだ。それが全て向日葵だと認識出来るまで、そんなにはかからなかった。小さな向日葵は頭上の空を仰ぎ、太陽の光を浴びてたくましくと背を伸ばしていた。

「ほら、ミトさん、向日葵だよ。一面の向日葵だ」

 ゼンさんは言って促し、車椅子を押すカワさんの足も自然と早まった。ミトさんは敷地の奥にすっかり目を奪われ、興奮するカワさんの急かすような押し具合にも気付かないようだった。からからからか、とせわしなく上がる車輪音があった。