気まずい空気が流れ、カワさんも窓の向こうへと視線を逃がした。

 車内は涼しく、太陽の光が当たる窓からは熱気が伝わってきた。ほどなくしてカワさんが「夏だねぇ」と囁くと、反対側の車窓を覗くゼンさんもまた「夏だな」と、心を込めずにぽつりと答えた。

          ◆◆◆

 その遊園地は、平日とあって広い駐車場もがらがらだった。入口近くに車が停められ、ゼンさんは慣れたようにミトさんを車椅子に移した。

 ミトさんは小さな白いレースの日傘を持っており、車椅子が安定すると慣れたようにそれを差した。太陽の日差しが遮られ、白い傘越しに明るい光が彼女を照らし出す。にっこりとほほ笑んだその姿を、ゼンさんは綺麗だと思った。

 ゼンさんとカワさんは、仕上げとばかりに看護師たちから渡されていた麦わら帽子をかぶった。手ぶらの中、カワさんは自前のカメラを首に提げた。


 小奇麗な格好をした貴婦人のような車椅子のミトさん、休日を自宅で過ごすような緩い生地に脂肪を乗せたカワさん、しゃんと伸びた長身の細身に白いシャツをつけ、彫りの深い浅黒い顔に鋭い瞳をした無愛想な面持ちをしたゼンさん。

 その三人の組み合わせをマサヨシの向こうに見つめ、遊園地のチケット販売の受付嬢は、なんとも奇妙な組み合わせだと言わんばかりの顔をした。