「ゼンさん、これ、すごく大きな向日葵だね。巨大化しているのかな?」
「さぁな。元々この大きさなんだろうという気もするが」
「すごく大きいわねぇ。どのくらいあるのかしら?」
「ミトさんやカワさんよりも大きいだろうな」

 ゼンさんは目測で言い、腕を組んだまま仏頂面をバックミラーに向けた。そこには、苦笑したマサヨシの目が映っていた。笑った顔は幼い時の面影がある。目尻の皺は、どれほど年月の隔たりがあるのか告げているようだった。

「畑違いだったみたいだ」

 マサヨシはそう言って、畑道を抜けると国道へと車を戻した。スピードが四十キロを越える頃になると再び車窓は閉められ、冷房機が静かに回る音だけが残った。

 ゼンさんは、そこでようやく「なるほどな」と相槌を打った。

「『畑違い』とは、なかなか上手いことを言う」
「上から見たら、そのまま向日葵畑だったんだ。もし父さんがそれを見ていたら、俺と同じように勘違いしたと思うけど?」
「僕は、小人の気分が味わえて面白かったよ」
「ひまわり、下から見上げてもきれいだったわねぇ」

 自分とは対照的に呑気な意見が出て、ゼンさんはやかましそうにシートにもたれた。思わず「三対一か」と唇を尖らせると、カワさんが少しはマサヨシがいる状況に慣れたように「まぁまぁ、いいじゃない」と上機嫌になだめた。