「こんにちは、ミトさん。今日は、とてもいい天気だよ。向日葵がとても綺麗に見えるだろうね」
「ええ、とても楽しみよ。私、理由は忘れてしまったけれど、ひまわりがとても好きなの」
「僕は元気いっぱいの花だから好きだよ。なんだか、日差しをサンサンと浴びて、楽しそうな花のイメージがあるし!」
「ふふふっ、私もそう思うわ」

 ミトさんは上品に微笑した。わざとらしくおどけたカワさんも、ようやくいつもの照れ笑いを浮かべて頭をかいた。

 切なさや悲しみは、ひとまず置いていこう。それらは、今は影を潜めなければならない。ゼンさんもそれを分かっていたから、心の底からミトさんに笑いかけた。「三人で、向日葵を見に行こう」と彼が告げると、カワさんも口を開いた。

「ミトさんと、ゼンさんと、僕の三人で見に行けるなんて、とても嬉しいよ」

 けれどカワさんは、そのあとに続くはずだった言葉を切るように、不自然に口をつぐんで誤魔化すように笑った。三人で暮らせたら、という台詞を、ゼンさんは思い出していた。笑うカワさんの瞳は潤んでいた。