そこに、オカメ看護師が車椅子のミトさんを連れて現れた。ミトさんは膝掛けに皺の入った白い両手を添え、こちらに向かって微笑みかけてきた。その暖かい空気は以前のような親しみがあり、カワさんが思わず「ミトさん」と声をかけて駆ける。

「はい。ミト、と申します。今日、一緒にひまわりを見てくれる方?」

 その時、ミトさんが子供みたいな少し舌足らずな口調で、穏やかにそう告げてきた。

 以前のような感覚がまだ抜けていなかったカワさんは、駆け寄ろうとした足並みを落とし、涙腺が緩むのを堪えて、それから顔を上げてにっこりと笑った。

「僕は『カワさん』、そして、向こうにいるのが『ゼンさん』」
「今日は運転手さんが一人いて、ミトさんたち三人を連れて行ってくれるんですよ」

 オカメ看護師が、助けるようにしてそう言った。

 ゼンさんは、ポケットの中で触っていたロケットペンダントから手を離した。ゆっくりとミトさんに歩み寄ると、カワさんの隣で膝を落として彼女と目線を合わせ、ハッキリと言葉を区切りながら優しく声をかけた。