T遊園地は、愛之丘老人施設から国道で、一番早ければ四十分で着く。これは渋滞に巻き込まれることなく快調にドライブが進み、当国道の法定速度六十キロで走り続けた場合の換算推定時間である。

 その国道に乗るまでは、田舎町の細道がしばらく続く。そこを考えると、約一時間と計算した方がいい。少々混んだ場合は、マサヨシがいうように一時間と二十分はかかるだろう。


 そこまで考えたところで、ゼンさんは窓からカワさんへと視線を移した。

「ミトさんは、車酔いをする方だろうか?」
「僕は大丈夫だと聞いてるよ」
「カワさんは?」
「左ハンドルの車を運転していたから、左側に座れば特に酔わないと思う」
「くそっ、富裕層が」

 ゼンさんが毒ついても、カワさんは臆病癖が直ったように「えへへへ」と笑うだけだった。それからしばらく、二人はミトさんと外出する時間を待ちながら、読書とお喋りを楽しんだ。

             ◆◆◆

 午前九時三十分頃。

 カワさんは、職員に頼んで買ってきてもらった使い捨てカメラを持ち、ゼンさんは、大事にしまって取っていたロケットペンダントを、ポケットにしまい込んで部屋を出た。