カワさんは、しばらく窓の外を眺めていたが、数分すると自分の部屋から持ってきた本を広げた。窓越しの太陽の日差しは、熱さを帯びて室内を眩しいくらいに明るくしていた。

「こりゃあ、随分と暑い外出になりそうだな」
「痩せるかなぁ」

 ふっとカワさんが視線を上げて、そんな呟きをもらす。

 ゼンさんは二つ目の薬を掌に乗せたまま、眉間に皺を寄せてカワさんを見やった。

「日焼けするだけだろう。ミトさんには、日傘が必要だな」
「ゼンさんみたいに、僕も引き締まった肌の色になれるかな?」
「俺のは、たんに浅黒いって言うんだ。シミやそばかすだらけだぜ」

 そう答えて、ゼンさんは薬を飲みこんだ。次の薬を飲むまでの間、外の風景でも見ようかと首を動かした際、瞳孔を貫くような眩しい光に目を細めた。

 サングラスか帽子が必要になりそうだ。麦わら帽子をかぶっていた母の姿を思い出し、ゼンさんは拳をぎゅっと握りしめた。