ミトさんも、本日は体調が良いらしかった。食後に部屋のあるフロアへ上がった時、ゼンさんとカワさんは別の中年看護師にそれを聞かされた。

 食事は短時間ごとに少量柔かいものを与えており、これからまた少し睡眠を取らせて、十時前にもう一度食事を与えるという。

「十時までには準備を終わらせて、一階へ連れていきますからね。必要な物は、私たちが袋に入れて持たせます」

 四十代の細身の女看護師が早口で言って、小さな胸を強調するような姿勢で歩き去っていった。

 女性の部屋だとは思いながらも、つい二人は揃って首を伸ばして、扉が開きっぱなしの部屋の中を覗きこんだ。ミトさんはぐっすり眠っており、二人は顔を見合わせると、お互い唇の前に人差し指を当てて彼女の部屋をあとにした。

 例の如く廊下に車椅子を置き、二人はゼンさんの部屋に入った。ゼンさんは机に薬を並べ、カワさんは部屋の隅に常備されている大きめの椅子を引っ張り出して腰かける。