キッチン前に移動していたオカメ看護師が、睨みつけるようにこちらを振り返ってきたが、ゼンさんは盛大な溜息を我慢せずに出した。

「おいおい、一体なんの冗談だい、カワさん?」
「仕方ないんだよ。だって明日は、別の視察団体が来るみたいで――」
「なるほど。次は、俺たちが見せ物になるってわけだな?」
「……まぁ、そういうことかもしれないけれど。でも他の職員は暇がなくなるけれど、彼女なら都合がつくと言っていたよ。この前、僕たちと一緒にいた……スドウマサキ先生? ……うん、確かスドウ先生だ。彼がね、ばっちりウィンクを決めて『彼女に任せとけば大丈夫さ』って言っていたよ」

 どの若医者を指しているのか、ゼンさんはすぐに分かったが、彼は知らぬ振りで喉に味噌汁を流し込んだ。

 今日のゼンさんも、カワさん同様に食事が早い。ほとんど味のない料理も、すんなりと彼の胃袋に収まった。「ちゃんと噛みましたか」とオカメ看護師が目敏く言ってきたが、彼もまた澄ました顔で「三十回以上は噛み砕いたな」と、ニヤリとして小さくなった黄色い歯を見せた。