「どうしたね、カワさん? 始終にやにやして、ちょいとばかし気持ち悪いぞ。いや、気味が悪い」
「『どうして』だって? そりゃあ嬉しいに決まってるよ。ミトさんとゼンさんと、三人で一緒に向日葵を見に行けるんだもの」

 カワさんは、ハキハキとした口調でそう言った。五分足らずで食事を平らげてしまったので、オカメ看護士に「きちんと噛んで食べなさいと指導しましたよね?」と刺のある声で言われた。

 しかし、それでもカワさんは幸せそうに笑んだまま「はいはい」と、反省の色がない返事をしただけだった。ボケてしまっているのではないか、とゼンさんと彼女が心配してしまうほど上機嫌である。

「ミトさんは、明後日ここを出ていくんだって」
「そうか」
「明日は看護師付きでなら、施設の庭園まで出ていいって言われたよ。三人で一緒に少し散歩しようよ」
「まさか、オカメが一緒につくわけじゃあないよな?」
「どうして分かったの?」

 目を丸くしたカワさんを見て、ゼンさんは眩暈を覚えた。