明日の天気は晴れだ。
 ゼンさんは、それを思ってほっと胸を撫で下ろした。
  

 ミトさんとの面会は、本日の午後から出来るようになっていた。彼女は、すっかり年老いてしまっていた。世話をしているのは、もっぱらオカメ看護師で、この日も彼女がそばについていた。


「こんにちは、ミトさん」
「はい、はい、こんにちは」

 ゼンさんが気さくなに挨拶すると、ミトさんは笑顔で答えた。すっかり弛緩してしまった筋肉は、ミトさんからハキハキとしていた口調を奪ってしまっていた。

 左肩で軽く束ねられただけの髪は、オカメ看護師がやったもので、ミトさんはもう自分の髪を整える方法も忘れてしまっているらしい。

 ミトさんはベッドの上で上体を起こしただけの体勢で、ゼンさんとカワさんを迎えた。夜にあった騒ぎの出来事と、その直後の会話は何一つ覚えていないようだった。

「ふふふ、いいお天気ですねぇ」
「本当に良い天気ですよ。俺はこう見えて向日葵が好きでね。ミトさんは、好きかい?」
「好きですよ、ひまわり。とてもあたたかいお花ねぇ」

 見に行きたい、と少し前までのようには言わなかったものの、ミトさんの瞳は懐かしむように暖かく笑んでいた。