憮然とした表情のオカメ看護師の手には、白いコピー用紙があった。そこにはボールペンで、不細工な生き物がいびつな荒い線で描かれていた。どうにか耳を持った動物だと判断できるくらいで、正直に言うと幼児の落書きにしか見えない。

 その手書きのイラストの下には、絵の雰囲気と正反対の達筆で、対象キャラクターの名前が記名されていた。一瞬首を傾げたカワさんの横で、すぐにゼンさんが反応し憤慨した。

「『猫のホームズ』に失礼だ」

 美人なんだぞ、と怒鳴るゼンさんの横で、カワさんは苦笑して「やっぱり素直じゃないなぁ」と一人おかしそうに呟いた。

          ◆◆◆

 マサヨシから折り返しの電話があったのは、昼を少し過ぎた頃だった。施設に連絡が入り、ゼンさんは受付の中に車椅子を押し進めて、そこで電話を取った。

『時間は短い。無駄話は避けたいんだ。まずは、事情を説明してくれないか?』

 ゼンさんは「いいだろう」と了承し、自分なりに要点をまとめて話した。