それは、とても簡単な霊感テストだった。

 霊感の有無と強さが分かると、子供たちの間で流行った『遊び』の一つだ。

 信憑性は分からぬ。
 誰がはじめたのかも知らぬ。

 もとより我々には、その信憑性も確かさも必要なかった。
 ただのお遊びで、暇つぶしの一つに過ぎないのだから。


・その家は、出入り口が一つしかない。
・その家は、玄関を開けて左右に廊下が伸びる他には道がない。
・その家は、同じ間隔を置いて正方形の窓を持っている。


 ルールは簡単だ。出来るだけ鮮明に想像すること、そして……

【入室したのなら、必ず時計回りに進み玄関まで戻って、必ず外に出ること】

             ※※※

「まず廊下があったわ」
「でも印象的なのは、廊下の壁に並んだ小さな窓だよ」
「いや、窓は大きかった。そこから森が見えたもの」
「けれど出入り口は、やはり一つなのだ」

 幼い頃の、そんな会話を思い出した。

 それは好奇心でやってみた霊感テストだった。

 私達は目を閉じた暗闇の中で、全く同じ家を想像したと錯覚して騒いだ。想像する【家】の条件は決まっていて、想像物が統一された暗示のようなカラクリであったのだが、当時の幼い私達は、一時でもオカルト的な世界に足を踏み入れたような興奮を覚えたのだ。