入ってみたその道は、車が一台通れるくらいの幅だった。白に近い灰色のコンクリートは滑らかで、両側には地面と同じ色の高い塀が続いている。先程の風変わりな街灯が等間隔で並び、とても清潔でキレイという印象を受けた。

 やはり最近出来た道なのだろう。そう思いながら歩き続けていると、ふっと道がワントーン明るくなった気がした。

 蒸せるような暑さが消えるのを感じて、疑問を覚えて足を止める。どこか冷房の効いたような空間を訝って目を向け――「え」と声が出た。

 月明かりに照らし出された道の上を、魚達が優雅に泳いでいる。色とりどりの小さな魚達は、尾びれを揺らしてゆったりと宙を浮いて進んでいた。

「な、なんだこれ……」

 まるで自分が海の中を歩いているように錯覚した。肌に感じる冷たさとその光景に動揺してしまい、日野宮は鞄を胸に抱えて恐る恐る歩き出す。

「…………俺、疲れているのかな」

 こちらに触れる直前に、すいっと離れていく魚達を見回しながら呟いた。彼らは全く警戒する様子がなくて、噛み付いてくる感じもなく害はなさそうだった。