「どうぞ」
そう言うと、にっこりと笑って再びカウンターの奥へと戻っていった。
片付けのためだろう。日野宮は、目の前に視線を戻した。そこには米茶碗に盛られたふっくらとした白米、醤油の香ばしい匂いがする野菜炒め物、それから温かな匂いを漂わせて湯気を立ち昇らせる味噌汁……――。
「……いただきます」
まるであの日と同じメニューだった。ゆっくりと軽い箸を持ち、記憶と違わないその『夕飯』に手を伸ばした。
味噌汁は、味が薄くてほんのり甘さがある。いつも適当に味付けされているのに美味しく仕上がっていた野菜炒めも、柔らかくて白いご飯も母の水加減そのままだった。
あの頃の夕食が再現されたような料理を見下ろして、何もかも一緒だ、と涙腺が緩みそうになる。なんで、どうして、思う言葉が込み上げるのに声にならなかった。
懐かしい味と匂いを噛み締めながら、ただただ一口一口を味わって食べた。それでもどんどん思い出してしまって、涙が出そうになり、最後は夢中でそれを口に運んで皿を空にした。
「…………ご馳走様でした」
日野宮は、最後に箸を置いて手を合わせた。声が少し震えてしまっていた。
そう言うと、にっこりと笑って再びカウンターの奥へと戻っていった。
片付けのためだろう。日野宮は、目の前に視線を戻した。そこには米茶碗に盛られたふっくらとした白米、醤油の香ばしい匂いがする野菜炒め物、それから温かな匂いを漂わせて湯気を立ち昇らせる味噌汁……――。
「……いただきます」
まるであの日と同じメニューだった。ゆっくりと軽い箸を持ち、記憶と違わないその『夕飯』に手を伸ばした。
味噌汁は、味が薄くてほんのり甘さがある。いつも適当に味付けされているのに美味しく仕上がっていた野菜炒めも、柔らかくて白いご飯も母の水加減そのままだった。
あの頃の夕食が再現されたような料理を見下ろして、何もかも一緒だ、と涙腺が緩みそうになる。なんで、どうして、思う言葉が込み上げるのに声にならなかった。
懐かしい味と匂いを噛み締めながら、ただただ一口一口を味わって食べた。それでもどんどん思い出してしまって、涙が出そうになり、最後は夢中でそれを口に運んで皿を空にした。
「…………ご馳走様でした」
日野宮は、最後に箸を置いて手を合わせた。声が少し震えてしまっていた。