例の、不思議調味料というやつだろうか……?

 疑問を覚えながらも、いつの間にか出されていた水に気付いてコップを手に取った。氷が入っているわけでもないのに、それはとても冷たくて美味しかった。
 しばらくすると、懐かしい匂いが鼻をかすめた。

「美味そうな匂いだな」

 ふっと少しだけ顔を上げて、鴉丸が呟いた。

「そうだね」

 相槌を打つ日野宮は、彼と同じくずっとカウンターの奥の方を見つめていた。

 匂いに意識を向けていると、料理を作る母の姿が脳裏に浮かんだ。いつも大雑把に材料を切り、手際よく調理していたものだ。腹をすかせて帰ってくるたび、畑から急いで戻ってきて短時間で料理を作り上げてしまう、とても優しい母親だった事を思い出した。

 知らず手を握り締めてしまった。オウミの「お待たせしました」の声が聞こえて、ハッとして顔を上げると、湯気のたつ料理皿を載せて戻ってくる姿が見えた。
 鴉丸が無言で見つめる中、彼がそれを日野宮の前に置いた。