本当に、雨ばかりが続いていた日だった。多くのパトカーや救急車が駆けつけ、次々に負傷者と救出された者たちへの対応が始まる中、宮橋は先輩刑事の腕を掴んだままでいた。

 事件ですっかり憔悴し、心を折られた小楠たちは何も出来なかった。雨に打たれて見つめている先で、まだ目尻に薄皺もなかった三鬼が、無防備に佇む彼の肩を掴んで正面から名を叫んだ。

――宮橋……どうした、いつもみたいに俺を罵倒しないのか…………おい、返事をしろよ……。なあ宮橋…………頼むから、こっちを見てくれ。

 もう刑事としてはやっていけないほど、完全に心が叩き潰されたのかと思った。しかし、宮橋は長らく佇んだ後、ようやく三鬼を見つめ返して「どうして」と、たった一言ポツリと口にした。

 開きかけた口から、残る言葉は出てはこなかった。ただ、まるで置いていかれた子供みたいな目で三鬼を見つめていて、ゆっくりと眼球を抉ろうとするのを見て彼が飛びかかり、ヤメロ宮橋と叫んで――