その後、ふわふわとした白いタオルを頭からかけられた。雪弥はそれに気付いて、腰を落としてこちらを覗きこむ宵月を見つめ返した。無言で頭髪を優しく拭き始める彼に、騒ぎになってしまった事も含めて「すみません」と謝った。

「えっと、あの」

 続けて説明しようと口を開いたものの、言葉が出て来ない。そもそも、どうしてこんな事になっているのだろう、と直前までの記憶があやふやで疑問に思う。

 すると、一通り頭をタオルで拭った宵月が、こちらの顔にかかった水を拭いにかかりながら、いつも通り淡々とした口調で話しかけてきた。

「大丈夫ですか、雪弥様。派手にぶつかっておられましたが、どこか痛いところは?」
「うん、その、大丈夫」

 こんな事になったにもかかわらず、宵月が無事を確認する他は尋ねず、助け起こしてスーツにも少しかかっている水を拭いていく。

 雪弥は、トラックにぶつかっても平気なくらいには、自分の身体が頑丈な事を思った。相手の男性は随分年上そうだが大丈夫だろうか、と心配になって目を向けたところで、思考する余裕が戻ってきて、ふっと一つの可能性が浮かんだ。