その時、開いた大扉の向こうから、階段を下りてくる複数の足音が聞こえてきた。そのまま玄関へ向かうのだろうと思って耳を済ませていたら、段々とこちらに近づいてくるのに気付いて、雪弥は顔を顰めてソファに腰かけたままそちらを見やった。

 先程、書斎室にいた四人の男達が、室内をそろりと覗きこんできた。珍しい物を見るかのような視線を受けて、思わず口をへの字に引き結ぶ。その横で、何あれば対応に代わるというようにして、宵月が背筋を伸ばしたまま一歩前に出た。

 スーツを着こんだその男達は、こちらを訝しげに眺めながら、ひそひそと言葉を交わし始めた。

「確かにその証は見られるが…………」
「本当にあれが…………」
「しかし、それだけでは何とも…………」

 本人を前にして、こそこそ話すという新しい嫌がらせなのだろうか?

 雪弥は、そう勘繰って睨みつけてみたが、それでも男達が歩き出す様子はなかった。昔のように、排除してやるぞと直接行動を移してくる気配はないようなので、ひとまずは相手にしない方が手っ取り早いと諦めて、首の位置を元に戻す。