「失礼します」

 そう言って扉を開けると、広々とした室内が現れた。そこには、重々しい書斎机に腰を落ち着けた蒼慶と、ソファに腰を降ろす四人のスーツの男達の姿があった。

 四人は、三十代後半から五十代ほどの面々で、身に付けている腕時計やネクタイピンなどの高級品が目に留まった。嗅覚を意識的に遮断しなければならない香水の匂いが鼻をついて、一歩踏み込んだ位置で立ち止まると、気付いた彼らが一斉にこちらを向いてきた。

 新たな客人へと目を向けた一同が、そこに雪弥の姿を認めて、ハッとしたように目を見張った。長椅子に深く腰かけていた蒼慶が、片手を上げてざわつき始めた場を鎮め、上体を椅子の背から離して雪弥を見やる。

 彫りの深い目元、鼻筋まですっと整った美しい顔。それは男性神と象徴されてもおかしくはない美貌で、持ち前の、見方を変えれば凶悪にも思える仏頂面でも美麗さが薄まる事はなく、雪弥は男性として完璧な容姿をした兄を見つめ返した。