「お帰りなさい、お兄様。本当に久しぶり。……二年も顔を見せないなんて、ひどすぎるわ」
「うん、ごめんね。仕事が忙しかったんだ」

 緋菜は、その言葉の真意を問うように彼の瞳を見つめた。それから、「知ってる?」と幼い表情で続けて、二年ぶりに会う兄を確かめるように、今度はそろりそろりと身体を近づけた。

「私、もう二十三歳になるのよ? 最後にお兄様に会ったのは成人式の日、その前は高校の卒業式だけだったわ」
「僕も、二十四になったよ。兄さんは、来月で二十八歳だね」

 大切な兄妹だ、誕生日や年齢を忘れた事はない。アメリカにいた時も、当日に間に合うようプレゼントを贈っていた。

 すると緋菜が「そんな事じゃないったらッ」と言って、亜希子の後ろに隠れるように踵を返した。彼女の腕に細い両腕を回してから、ちらりと雪弥を見やる。

「毎年、誕生日プレゼントも届くけど…………、でも本当は電話でもいいから、もっとお話したかったし、会いたかったのよ? だって、ここがお兄様の家でしょう? お仕事で忙しいのは知っているけれど、時間を見つけて会いに来るぐらい、いいじゃない」

 そう口にして、緋菜が頬を膨らませて視線をそらす。