「本当に、ご兄弟なんですね。そっくりです」
その言葉を聞いた雪弥は、蒼慶とほぼ同時に振り返った。兄は思い切り顔を顰め、弟の雪弥も不服だと言わんばかりの視線を送る。
「ふん、私がコレと同じ阿保面なわけがないだろう」
「言ってくれますね、兄さん。――桃宮さん、僕はこんなにひどい仏頂面ではないです」
雪弥は、隣から軽く睨みつけられたものの、蒼慶の眼差しは普段の数分の一くらいの威力だったので、平気な顔で残りのケーキへとフォークを向けた。呆気に取られていた桃宮が「本当によく食べますねぇ」と不思議そうに呟いてから、再び新聞紙を広げた。
大皿のケーキが全てなくなると、給仕が空いた皿を下げに来た。三十代半ばくらいの彼が、珈琲を飲む横顔から覗く『見慣れない黒い瞳』をチラリと見やる。
その視線に遅れて気付いた雪弥は、何も考えないまま見つめ返していた。給仕の男の方が「あ」と口の形を作るのが見えて、幼少期に嫌がられていた思い出があるから視線を合わせないようにしていたのに、と遅れて思い出した。
その言葉を聞いた雪弥は、蒼慶とほぼ同時に振り返った。兄は思い切り顔を顰め、弟の雪弥も不服だと言わんばかりの視線を送る。
「ふん、私がコレと同じ阿保面なわけがないだろう」
「言ってくれますね、兄さん。――桃宮さん、僕はこんなにひどい仏頂面ではないです」
雪弥は、隣から軽く睨みつけられたものの、蒼慶の眼差しは普段の数分の一くらいの威力だったので、平気な顔で残りのケーキへとフォークを向けた。呆気に取られていた桃宮が「本当によく食べますねぇ」と不思議そうに呟いてから、再び新聞紙を広げた。
大皿のケーキが全てなくなると、給仕が空いた皿を下げに来た。三十代半ばくらいの彼が、珈琲を飲む横顔から覗く『見慣れない黒い瞳』をチラリと見やる。
その視線に遅れて気付いた雪弥は、何も考えないまま見つめ返していた。給仕の男の方が「あ」と口の形を作るのが見えて、幼少期に嫌がられていた思い出があるから視線を合わせないようにしていたのに、と遅れて思い出した。