自分に集まっている視線に気付いていないのか、注目されているという事に対する神経も図太いのか。全く反応を返さない雪弥に対して、蒼慶が眉根を寄せた時、とうとう亜希子と紗江子と緋菜が笑い出した。
「何?」
雪弥は、そこでようやく視線を返した。
すると、蒼慶の隣から顔を覗かせていた緋菜が、「なんでもないのよ」と小さく笑って、それから少し恥ずかしそうにはにかんだ。
「お兄様と一緒に、こうして食事をしていると思うと、なんだか嬉しくて」
「そんなに喜ばれるとは思わなかったな。考えたら、父さんにも『食べに来い』って、何度か言われていたっけ」
思い出して雪弥が言うと、亜希子が「タイミングが合わなくて、残念よねぇ」と外出中の夫を思って口にした。
少しすると、先に腹がいっぱいになったアリスが、食事のマナーを守るように大人しくしていた様子を一転させて、すっかり打ち解けた緋菜とお喋りを始めた。桃宮夫婦が亜希子と談笑して、そこにたびたび蒼慶が参加する。
雪弥はその声を聞きながら、口に食べ物を放り込んでいた。
窓の向こうへ目を向けてみると、空には清々しいほどの青が広がっていて、少ない雲が穏やかに東へと流れているのが見えた。ここに満ちているのは、普段自分が身を置いている日常からは、考えられないほど平和な空気だ。
「何?」
雪弥は、そこでようやく視線を返した。
すると、蒼慶の隣から顔を覗かせていた緋菜が、「なんでもないのよ」と小さく笑って、それから少し恥ずかしそうにはにかんだ。
「お兄様と一緒に、こうして食事をしていると思うと、なんだか嬉しくて」
「そんなに喜ばれるとは思わなかったな。考えたら、父さんにも『食べに来い』って、何度か言われていたっけ」
思い出して雪弥が言うと、亜希子が「タイミングが合わなくて、残念よねぇ」と外出中の夫を思って口にした。
少しすると、先に腹がいっぱいになったアリスが、食事のマナーを守るように大人しくしていた様子を一転させて、すっかり打ち解けた緋菜とお喋りを始めた。桃宮夫婦が亜希子と談笑して、そこにたびたび蒼慶が参加する。
雪弥はその声を聞きながら、口に食べ物を放り込んでいた。
窓の向こうへ目を向けてみると、空には清々しいほどの青が広がっていて、少ない雲が穏やかに東へと流れているのが見えた。ここに満ちているのは、普段自分が身を置いている日常からは、考えられないほど平和な空気だ。