言ったところで信じてもらえない内容ではあるけれど、セドリック達の顔色を見る限り、改ざんした報告を行ったのは、それなりにリスクのあるまずい事なのだろう。思えば、ルーファスは彼らにとって組織のトップにあたる人間だ。

 もしかしてオレを巻き込まないために、そうしてくれたの……?

 そのせいで、彼らに何かしらの罰則が与えられたりしたらどうしよう、とラビは途端に心配になった。セドリックとユリシスの横顔を見つめていると、こちらを楽しそうに見つめてルーファスが、無駄な沈黙を終わらせるように話しを再開した。

「先日の氷狼の件があったラオルテの町に調査員をやったら、小さな獣師には『相棒の大きな黒い狼』がいると報告も受けてね。母上にそれとなく手紙を出したら、黒い大きな犬がそばにいた、と」

 語る彼の意図が読めず、ラビは息を呑んだ。こちらを見据える瞳には、深い慈愛の他は感じられない。

 すると、ルーファスが困ったような微笑を浮かべた。その笑顔は、まだ村で暮らしていた頃にもよく見ていたもので、そういう表情をするとセドリックと雰囲気がよく似ていて……