ユリシスは、その返答を聞き届けると「ご協力ありがとうございます」と、淡々とした調子で告げて立ち上がった。次の問題に取りかかりましょう、と後ろを振り返る様子を見て、ラビはセドリック達と共に、彼の視線の先を追った。

 そこには、身を寄せ合って怖々とこちらを見つめているベック達がいた。戸惑い立ちつくしていた彼らは、自分達が注目されている事に気付くと、身体を強張らせて、訝ったノエルと目が合った途端にピキリと硬直する。

 まるでオバケでも見るような反応である。ノエルが『あ?』と喧嘩を売るような声を上げて、それがこう続けた。

『なんだよ、取って食ったりしねぇぞ』
「デカい狼が喋ってる……」

 長男であり、兄弟盗賊団のリーダーであるベッグが、ぎこちなく指を向けてそう言った。弟達が口を揃えて「さっき聞こえていたオバケの声だ」と、兄の後に続く。

 ラビは遅れて、そういえばノエルの声は、はじめから聞かれていたんだったと思い出した。