ただ一人冷静なユリシスが「珍しいですね」と言いつつ、上司のそれを拾い上げた。その様子を彼越しに目に留めていたラビは、茫然としつつ呆れた眼差しをセドリックに戻した。

「というか、セド……? サーバルさんがすごく反応に困っているみたいだけど、なんで剣を放り投げたの」
「ラビ、無事な顔を見せてください」
「また『話す時は目を合わせろ』ってこと? あのさ、今はそういう状況じゃな――ん? そういえば、体術得意なイメージなかったんだけど、セドってば、さっき凄く大きな瓦礫を蹴飛ばしてなかった?」

 昔はよくあった距離感だったから、ラビは馴染みのある愛称で呼んでいる事にも気付かず、見上げてそう尋ね返していた。

 目が合った途端、どうしてか、セドリックが真面目な顔で動かなくなってしまった。小首を傾げて「セド?」と確認してみたら、ますます凝視されて不思議になる。

「…………こんな時に、夢の光景がフラッシュバックするとは……」
「セド、何ぶつぶつ言ってんの?」