ラビは、感じたままそう口にした。ここにいるのは自分と親友の彼だけで、気を張る必要がないから、強い男の子のようにあろうという普段の意識が外れて、自然と本来の柔らかな口調になっていた。

 それは嘘偽りのない本心からの褒め言葉だ。それを知っているノエルは、先頭を歩きながら少し照れたように尻尾を数回振って、いつもは凛々しい眼差しを和らげた。

『別に凄くはないさ。それを言うんだったら、ラビもそうなんだぜ? 耐性がないと、普通の人間はここに居続けられない。視界は霞むし、記憶が曖昧になって、最後は意識が飛ぶ』
「酸素が足りなくなるってこと?」
『いや、そういう意味じゃないんだが……まぁ確かに昔、洞窟の話を聞かせた時にそうは教えたけどさ……――まっいいか』

 話しながら後ろに顔を向けたノエルは、幼い頃から変わらないラビの大きな金色の瞳に、まるで冒険みたいだね、というキラキラとした輝きを見て説明を諦めた。