だから、その手を取ろうとした。

 けれど途中で、ハッとして手を止めた。巨大な瓦礫が、自分達の真上から降ってくる光景が目に飛び込んだ一瞬後、ラビは助けを求めなければならないはずの手を大きく横に振って、彼らに警告を出していた。

「駄目だッ、今すぐそこから離れて!」
「へ……?」
「上からデカいのが来るから!」

 怒ったように叫んでみたら、ベック達がようやく気付いてくれて、反射的にその場から飛び退いた。ラビはほっとして、それから――強がっていた表情を解いた。助けて、と言いそうになる口を、唇をきゅっとして閉じる。

 その直後、ノエルが穴の中に飛び込んできたのが見えて、つい涙腺が緩みそうになった。彼が『俺の背中に』と言いかけたところで、ふと、下の方へ目を凝らした。

『下から、魔術で遮された空間を感じるな。もしかしたら、そこに何かあるのか――ラビ、ひとまず俺に掴まれ』
「下に着地するの? でもノエル、上から瓦礫がッ」
『大丈夫だ。最悪の場合、ちょっとお前に無理をさせちまうかもしれねぇけど、俺が絶対にどうにかしてやる。だから、何も心配するな』

 ラビは、落下の浮遊感の中で、ノエルの豊かな毛並みを掴まえて目を合わせた。