「いちいちギスギスした感じの視線を送ってくるの、やめない?」
「それは君の一方的な被害意識です。私は『小さいな』と思って見ていただけです」
「余計に性質(たち)悪いわ! オレの前を歩いているセドが、デカいだけなのッ」

 ラビは悔しくなって、うっかり幼馴染を愛称の方で呼んだとも気付かずに、そう言い返していた。

 ムキになって主張した彼女を、テトとサーバルが悪意なく「ちょっと小さめだと思うけどな」、「いや十七歳にしては小さいよ……」と見やる。彼らに背中を向けて前を歩くセドリックが、つい数秒ほど緊張感がゆるっゆるになって、口に手を当てて静かに悶えている事には、誰も気付いていなかった。

 ヴァンが、真面目な表情で左手を剣の柄にかけたまま、足元に注意しながら先頭を進んでいた。前方から聞こえるノエルの『今のところ通路自体の大きな崩壊がないのは、幸いだな』という声に集中し、細かい瓦礫と土埃を踏み超えつつ尋ねる。