声で場所を特定したのか、ここにいる誰よりも正確に、まるで見えているみたいにノエルの凛々しい立ち姿へと目を向ける。そんな幼馴染の様子を、ラビはじっと目を留めてしまっていた。

「ノエル、俺達の先頭に立って、案内役を頼んでもいいですか?」
『最初からそのつもりさ。ただし、俺はラビの歩調に合わせるからな』

 その答えを聞いて、セドリックが一瞬きょとんとした後、ふっと目元を和らげて「そうして頂けると助かります」と答えた。その様子を見たわけでもないのに、ノエルが横顔を顰めて『自分の事みたいに嬉しく言いやがって』と愚痴った。

 ラビは、彼らとは歩幅に差があると思い付けないまま、続いてセドリックに微笑みかけられて不思議になった。その表情は、昔から変わらない持ち前の優しさが滲み出ていて、相変わらずとても穏やかに笑う幼馴染だなぁと思った。

 この森に動物は生息していない。
 アビードの街から出発する直前にも、全員で確認して共有したその資料を思い返すように、ヴァンが思案気にざっと辺りを見やってこう言った。