ラビは気持ちを切り替えた。先程から自分が、慣れた方の呼び名で幼馴染に声を掛けていると気付かないまま「セドったら」と、椅子の背にもたれている彼の肩を揺らした。

「こんなところで寝たら風邪引くよ。そもそもオレ、お前の部屋分かんないし、運ぶ事なんて出来ないんだから、ちゃんと自分の足で歩いて行って欲しいんだけど」

 体格差がかなり出ている今、彼に肩を貸して歩かせるというのも、かなり難しい気がしていた。だから、セドリックには、しっかり起きて自分で部屋まで行ってもらわなければならない。

 もう一度「セド」と口にしてようやく、彼が眠たげに目を開けてこちらを見た。

「……ラビ? どうしたんですか?」
「どうしたもこうしたも、こっちが聞きたいんだけど。弱いのに、なんでお酒を飲んだの?」

 思わず顰め面で強めに指摘すると、セドリックが数回瞬きした。その顔にはしゃきっとした覚醒が窺えたものの、悪びれもなくきょとんとしている様子は、少し普段と違って反応が鈍い気がした。