セドリックは相変わらず、カウンターに置いたビールジョッキを握り締めたまま、椅子に背を持たれて俯き、小さな寝息を立てていた。首が痛くならないのか不思議でならないほど熟睡しているようだ。

 美麗な顔立ちをしているせいか、寝顔も暑苦しい印象はまるでない。酔っているというよりは、普通に眠っているというようにしか見えなかった。

「セド、お酒飲んで眠りこけるとか駄目じゃん」

 ひとまずは彼を起こそうと思って、ラビは昔からの癖で幼馴染を愛称で呼んで、頭を軽く一発はたいていた。

 それを見たノエルは、思わず『うわぁ容赦ねぇな』と呟いた。ここ連日続いたラビのそっけない態度や、何やらそわそわとして結局不発に終わったらしいセドリックの様子を思い返すと、飲んだ理由がちょっと分からないでもないんだが……と口の中に思案をこぼしてしまう。

 当のセドリックは、目が覚める様子はなかった。ラビは、店主の男がカウンターに戻ってきていないのを確認してから、世話のかかる幼馴染へと目を戻した。