「仕事終わりには、ビールって決まりでもあるのか?」
「いんや、特に決まりはねぇけど、夕食にビールは付きものって感じだな。副団長はいつも少し口にする程度なんだが、目が合ったと思ったら、突然一気飲みしたんだよなぁ」
『あ~……なるほど、なんとなく読めた気がする』

 ノエルは、日中に窃盗団を彼らに引き継いだ際にあった、ヴァンが向かってくるラビの頭を押さえた件だろうか、と思い至った推測を口の中に落とした。王都の伯爵本邸を訪問した時にも、セドリックが妙にそわそわしていた事を思い出す。

『……あの猫娘もショックを受けていたみたいだが、もしや頭でも触りたかったのか?』

 いやまさかな、とノエルは呟いて浮かんだその可能性を否定した。彼が独白する脇で、ヴァンとラビの話は続いていた。

「副団長は、今度はテトの方を見たタイミングで、二杯目のビールのお代わりを力いっぱい注文した。ユリシス様もびっくりしてたぜ」
「何やってんの、あいつ?」