ノエルが聴覚と嗅覚で察知したその犬は、町から出てすぐの少し突出した岩に背を持たれるようにして丸くなっていた。狩猟にも向いているようなウエスト周りが細くて四肢は長めで、少し汚れた固く短い毛をしていた。

 一見すると中型の野良犬だが、話を聞いてみると、どうやら町の隅にあるアパートメントのオーナーに買われている『立派な番犬ちゃん』であるらしい。名前を尋ねたら、番犬だよと疑いもなく答えられて、ラビは反応に困ってしまった。

 夜も早い時間は、食後の散歩に行っておいでと許可をもらって、いつもここで涼んでいるのだという。何せ、彼が番をしているアパートメントの一階は居酒屋で、夜が深まるほどに客の出入りが増えるのだとか。

『俺の他にも、何頭か犬仲間がいるぜ。みんな元は野良犬だけど、ここでは番犬として重宝されるんだ。さっきまで話し合いがてら、休んでいたんだけどな』

 その犬の話によれば、ここでは犬同士の毎日の情報交換が大事にされているらしい。気を付けなければならない人間がいたら前もって把握が出来るし、一頭では対応出来ない何か大きな事があった時に助け合えるよう、すぐに駆け付けられる連絡網を敷いているのだという。