鳥が夜の休憩所にするくらい、たっぷりの夜灯りで彩られたザイードは、町中だけでなくその周囲は安全地帯になっているようだ。道理で馬車の馬を休ませる馬小屋も、町の周囲三ヶ所の外側に堂々と設けられているわけである。

 
 ラビはしばし、先導するノエルの後ろを歩いた。吹き抜ける風は涼しく、乾燥した大地は静まり返っており、灯かりがこぼれる町の方から人々の賑わいが遠く聞こえてくるばかりだ。

 耳を済ませると、干からびた地面の上を、砂や小さな石が転がり移動する音が聞こえた。満天の星空の下、明かりもない向こうの大地は夜の陰りに包まれている。


 人がいないだけで、こんなにも自然な気持ちで歩く事が出来るのだ。

 ふと、そんな思いが脳裏を過ぎった。目の前を歩くノエルは、こちらのペースに合わせてくれていて、のんびりと四肢を動かし尻尾を揺らせている。

 もし二人で一緒に旅をするとしたら、このような感じなのだろうか。風の音や風景を眺めながら、ふわふわとした居心地の良さで歩く。奇異の視線に肩に力を入れなくてもいいし、いつまでも好きなだけノエルと話し、彼の尻尾を目で追うことだって出来るのだろう。