「ははは……」

 王宮の騎士は体力作りに悪影響ということで、一部煙草が禁止されているところもある。奴らはああ見えて、俺よりも礼儀正しいところもあるんすよ――とヴァンはぎこちなくフォローを入れておいた。

 この国では葉巻を楽しむ者は多いが、煙草というのは庶民の何割かが嗜好している程度だ。第三騎士団では、唯一ヴァンだけが喫煙者である。

 二人が老婆に声を掛けられたと気付いて、出入り口の向こうの日陰で休んでいたジンとテトとサーバルが、何かあったのだろうかとこちらに目を向けてきた。セドリックは彼らに、問題事ではないと視線で待機命令を出し、老婆に優しく尋ねた。

「僕らに何かご用ですか?」
「金色の髪の子と行動しているんだろう? 出てきたら、話しているのが聞こえてね、それで声を掛けたんだよ」

 そう言って、老婆が微笑む。

 どうして声を掛けたのか、という意図の分からない回答だ。セドリックは、先程まで話していた部下とつい視線を絡めた。ここで上司を動かすのもなぁ、とまたしても珍しく空気を読んだヴァンが、一つの可能性をもとに口を開く。