ラビと出会ったのは物心付いた頃で、セドリックは当時、ちょっとしたお伽噺の他は知らなかった。父が「綺麗な髪と目だ」「愛らしい娘だ」と心の底から告げる姿が、とても印象的に目に焼き付いたのを覚えている。

 父に抱き上げられた幼い彼女は、ちょっと恥ずかしそうにしていて、彼女の母に丁寧に整えられた長い髪が、キラキラとしているのも印象的だった。とても仲の良い家族だった。


 けれど大雨の日、馬車の事故が起こって彼女の両親が他界した。

 この国では埋葬が一般的だったが、古い地方では火葬のあとに山に遺灰をまいて来世を祈る習慣があって、ひっそりとそれが行われた。お墓は持てないからだと、幼い女の子が我慢する顔で告げる姿は痛々しかった。


 どうしてラビが火葬の習慣を知っていたのか、当時は疑問に思う者はいなかった。薬草師と調合を行っていた彼女の両親は、ホノワ村に来るまでは隣町で店をやっていたという他は、出身地さえ知られていなかったせいもある。