今回の騒ぎに関しては、たまたま居合わせた第三騎士団の臨時班が、窃盗の現行犯確保に協力した事になっている。これで上司の胃へのダメージが、少しでも減ってくれるといいのだが……。

 とはいえ、セドリックは別件の事で頭がいっぱいにもなっていた。上司であるグリセンの事を考えてすぐ、またしても悩ましげな思考が戻ってきて、鈍い頭痛まで覚えて額を押さえ小さく項垂れた。

「間接的とはいえ、まさかヴァンに先を越されるとは……」

 自分だって、ラビの頭をぐりぐりしてみたい。

 改めて口にすると、どこか変態チックにも聞こえる。セドリックは口の中で呟いた直後、なんて女々しいんだ、と両手で顔を覆って静かに震えた。

 これまで、こうして共に行動出来る機会は滅多になかった。だから本当は、ザイードの町を歩きがてら、ラビと二人きりで少しだけでも一緒に回れればと思っていたのだ。ここで僅かでも距離感を近づけられたら、と期待して考えていただけに、予測が掴めない彼女の行動力の強さには、頭を抱えてもいる。