ひとまず、見付けたらぶっ飛ばす。財布も返してもらう。

 売られた喧嘩は買ってやるという持ち前の精神で、ラビは人の間をぬうように走って、財布を盗っていった男達を捜した。通りを真っ直ぐ進みきると、混雑さが若干解消されているようにも見える一番の広い通りに抜けた。

 目を走らせてすぐ、乱暴に「どけッ」と人を押しのけて走る三人の男の姿が目に留まった。汚れた古いローブで身を包み、頭に独特の結び目をしたターバンを巻いている。
 彼らが通過した場所から、少し遅れて「財布がないっ」という悲鳴が上がった。逃げながらも盗み続けているとは、阿呆じゃなかろうか。ラビは、奴らに違いないと踏んだ瞬間に「待てこの野郎!」と叫んで猛全と走り出していた。

 怒鳴り声を聞いた三人の男たちが、肩越しにこちらを見やった。民族衣装に近い重ねられた旅着は、古風だったのでてっきり中年ほどかと思っていたのだが、彼らは二十代くらいの痩せた彫りの深い顔立ちをしていた。