「どうしてそこまで絞り込めるの?」
『本来、設置した状態で発動するタイプの術具ってのは、弾いたり落としたりと単純だ。そもそも、突然大量の幻覚を出したりするほどの魔力――エネルギーを貯め込めない物がほとんどなんだ』

 ラオルテの町で見た【月の石】も、簡易術具の原材料の一つではある。あれを砕いて作る防御系の術具があり、その場合、害獣の牙を弾ける回数は三回が限度だという。

『発動回数が少なかったとしても、一般で出回っていた術具で、何百年も効果が続く物はない。それでいて、今回のはわざわざ遺跡の奥にしまわれているらしい代物だろ? とすると、妖獣師本人でさえ処分できなかった、遺品みてぇな可能性も高いってわけだ」

 魔力が強い術具ほど、一度作られてしまえば壊す事も出来ない強度を持ち、それを扱える妖獣師も限定されてくる。彼らは、自分の術具の継承者がいない場合、他界する前に保管場所を記した遺言書を弟子に預けた。