そこがよく分からねぇ、とノエルは優雅に伏せたまま尻尾を大きく振った。

『今回の『砂の蛇』に関しては、正直言うと蛇そのものの情報が少な過ぎて、今の時点ではなんとも言えねぇんだ。そのプロの獣師は、本物の亡霊だと口にしていたようだが、未知の蛇だからそう口にしたのか、生物ではない形だけの魔術を見てそう表現したのか、分からねぇ』

 語るノエルは、特に残念そうな表情もする事無く、ひどく厄介だという顔をする事もなく、ニヤリと口角を引き上げていた。その術具に関しては、何かしら期待出来る要因が他にあるようだと察して、ラビは質問を控えて、彼の続く言葉を待った。

 ほんの少し、思案を働かせるように窓の方を眺めていたノエルが、考えがまとまったように一つ頷いてこちらを見た。

『足を踏み入れてすぐには発動しないとなると、単純に仕掛けられるような攻撃系術具ではないだろうな。恐らくは妖獣師が術を行使する際の、魔力を補ったり、時には手助けさせるためにずっと身に付けていた物だろうと思う』