そもそも、ルーファスの話だけでは、蛇がどれほどの大きさだったのかも不明である。

 キーワードの中に『砂の蛇』とはあったものの、まさか蛇の形をした生きた砂というのも想像できなくて、プロの獣師が逃げ出すくらいの見た事もない種類の猛毒蛇だったのだろうか、とラビは自分なりに推測を立てているところである。

「その術具を使って、動物を生みだす事も出来るの?」
『幻覚の一種であれば可能だぜ。とはいえ、人間がこの世界で見た事がないだけで、俺らの知る【妖獣】の姿を模っているってパターンがほとんどだな』

 よく絵本に書かれているような火で出来た鳥も、妖獣世界には当たり前にいるらしい。水の中ではなく、空気の中を泳ぐボールのような魚もいれば、半透明の虫や、七色に点滅を繰り返す動く植物生命体もいる。

 その話を聞いて、ラビは一つ質問をしてみた。

「じゃあ、砂で出来た蛇もいたりするの?」
『砂くらい小さい物質で形作られたモノは、見た事がねぇな。俺ら妖獣も、人間界でいうところの生物で動物だ』