ちょうど宿の近くまで来たところで、まるでそれを知っていたかのような自然さで、ケイティがそう切り出した。

「王都には、いろんな人間が集まっているからね。さっき親切に声を掛けてくれた二人組みたいな人もいるだろうけど、みんなが皆そうという訳ではない。美味しい物を上げるよ、と言われても、簡単にはついていかないようにね」
「…………」
「あははは、露骨に顔に出るのも面白いなぁ。僕は食べ物で君を釣った訳じゃないから、セーフだよ」

 そう言って、ケイティがハット帽を被り直した。

「これから仲良くしてくれると嬉しいよ。お兄さんみたいに頼ってくれて構わないから、何かあれば僕の会社においで」

 にっこりと笑いかけられて、ラビは「そう簡単に頼っていいもんなのかなぁ……」と呟いて首を捻った。
 するとケイティが、「僕はいつでも、頑張る人の味方なんだ」と含むような独り言を口にして穏やかに笑んだかと思うと、片手を振って人混みにまぎれて行った。

             ※※※

 不思議な男に出会った後、ラビは真っ直ぐ宿に戻った。