『氷狼かぁ……体表がクソ硬ぇんだよな。血に触れると鉄だろうが一瞬で凍っちまうから、銃弾も貫通しないんだぜ』

 ノエルがニヤリとして補足して来たので、ラビは心の中で「へぇ」と答えつつ、彼と目を合わせた。

 ノエルは自身の生い立ちや、ホノワ村に来るまでの経緯といった詳細は語らなかったが、他の獣についてはかなり詳しく知っていた。ラビは、害獣達の生々しい話を彼から聞かされるたび、ノエルがどのぐらい長生きしているのかと疑問を覚えるほどだ。

 勿論、聞いていてすごく面白いし、好奇心を引かれる事の方が多い。ノエルはあらゆる土地の話や、国、宗教、地形にも詳しく、多くの経験を持っている。

「馬の脚に何か?」

 不意に、ユリシスが怪訝そうに言った。

 ラビは彼ら目も向けず「なんでもねぇよ」と、ノエルと目を合わせながら答えた。

「で、氷狼がなに? あいつらは人里には降りない習性だろ」
「ラビ、また顔が向こうを向いてますよ」

 セドリックが指摘しつつも、語尾を弱めてこう続けた。