ユリシスは腕を組むと、改めてラビを観察するように見てきた。品定めされているようで嫌な感じで、ラビが露骨に拒否の表情を浮かべると、ユリシスも眉間に皺を刻んだ。

「君は害獣の【氷狼】を知っていますか?」
「まぁ、存在は知っているけど……一般的に知られている範囲内なら」

 ラビは、ユリシスの凝視に慣れず、思わず歯切れ悪く言った。氷狼については、危険動物の一種として中級の害獣に指定されており、昔、両親が揃えてくれていた図鑑で何度か見た事があった。

 体表が氷で覆われた狼で、年中雪に覆われた場所にのみ生息する害獣である。血液は、触れた先から熱を奪っていく性質があり、害獣についても知識が深いノエルの話だと、気性は荒いが、縄張りを荒らさなければ逆鱗に触れる事はないらしい。

 中級以上に指定されている害獣に関しては、氷狼のように、個性的な生態と能力を持っているものが多い。例えば【炎狼】だと、氷狼とは逆の性質で、血に触れると冷気か奪われ燃えるともいわれている。