馬車は、ホノワ村の伯爵家の別荘を出発すると、十分もしないうちに村はずれの小さな家の前で停まった。
ラビは馬車を降りるなり、我が家の懐かしさに吐息をこぼした。
二週間近く家を空けたのは初めてだったから、何となく安堵感を覚えてしまう。彼女の隣では、ノエルが飛び去る鳥を目で追っていた。
「……なんか、やっと帰って来られたって感じがする」
『そうか? 俺にはよく分からねぇな』
「ノエル、冷たい」
別れの言葉もなく感慨深く家を眺めるラビを、セドリックは馬車の前に立ったまま、声を駆けるタイミングを探していた見つめていたが――
セドリックは、不意に言葉を失ってしまった。ユリシスも、彼の横で一人と一匹の後ろ姿を眺めて目尻に皺を刻んだ。
小さな少女と大きな狼が暮らす家は、物語に出てくるような、ママゴトの一軒家を思わせた。並ぶ後ろ姿が溶け込む風景が、午後の柔らかくなった日差しの中で、淡く霞んでいるようにも見える。
二人の男が見つめる中、ラビが頬を膨らませ、ノエルが首を傾げる。すると、黒大狼が彼女の脇腹に頭をすり寄せて、幸福そうに目を閉じた。
『お前が隣にいる。それだけでいい』
「ふふ、突然どうしたの。オレも、ノエルがいてくれて嬉しいよ」
ラビは彼の頭を撫でると、スコーンが入った袋を後ろ手に持って、改めて自分達の家へと目を向けた。
ラビは馬車を降りるなり、我が家の懐かしさに吐息をこぼした。
二週間近く家を空けたのは初めてだったから、何となく安堵感を覚えてしまう。彼女の隣では、ノエルが飛び去る鳥を目で追っていた。
「……なんか、やっと帰って来られたって感じがする」
『そうか? 俺にはよく分からねぇな』
「ノエル、冷たい」
別れの言葉もなく感慨深く家を眺めるラビを、セドリックは馬車の前に立ったまま、声を駆けるタイミングを探していた見つめていたが――
セドリックは、不意に言葉を失ってしまった。ユリシスも、彼の横で一人と一匹の後ろ姿を眺めて目尻に皺を刻んだ。
小さな少女と大きな狼が暮らす家は、物語に出てくるような、ママゴトの一軒家を思わせた。並ぶ後ろ姿が溶け込む風景が、午後の柔らかくなった日差しの中で、淡く霞んでいるようにも見える。
二人の男が見つめる中、ラビが頬を膨らませ、ノエルが首を傾げる。すると、黒大狼が彼女の脇腹に頭をすり寄せて、幸福そうに目を閉じた。
『お前が隣にいる。それだけでいい』
「ふふ、突然どうしたの。オレも、ノエルがいてくれて嬉しいよ」
ラビは彼の頭を撫でると、スコーンが入った袋を後ろ手に持って、改めて自分達の家へと目を向けた。