四人が到着した通りの場所は、遊園地のメイン・ゲートのようだった。ゲートから頂上へ向けて、ゆったりとカーブを描く坂道が伸びており、至るところに建物や施設が立ち並んでいた。

 メイン通りの他にも道が別れており、色鮮やかで形も大きさも違う多くの建物が入り乱れている。

「さっき一休憩しているんだから、ちゃちゃっと任務を終わらせてしまおう」

 スウェンが歩き出し、一同はその後をついて歩いた。

 一見する限りでは、害が発生するような状況は考えにくかったが、何が起こるかは未知数だ。警戒するに越した事はないだろう。エルは、コートの上から銃の存在を今一度確かめた。

 自分の身は自分で守る。絶対に足手まといにならない。

 目に止まる人々は、家族連れや恋人が多く、皆とても楽しそうだった。ただの夢の中の登場人物とは思えないほど、彼らの顔に浮かぶ表情は暖かい。

 エルは、改めて辺りを見回してみたが、仮想空間内はどこまでもリアルに再現されているようで現実世界と錯覚しそうになった。人の声に同一性はなく、キャラ設定でもあるのか人間としての個性も窺える。

 しかも、先程のホテルとは違い、地面に敷かれた柔らかいタイルの感触も、鼻先にかすめる様々な食べ物や香水の匂いも、日差しに照らされた建物が熱を持った時の独特の匂いも、半ば現実味を増して五感に伝わって来た。

 唯一の欠点とするならば、太陽の日差しの再現までは出来てない事ぐらいだろうか。

 通りを進みながら、エルはふと、アイスクリームのショップの前にいる母子に目が止まった。トリプルのコーンアイスを頼んだ六歳ぐらいの男の子が、一番上に乗せていたはずのアイスを地面に落として泣き始めていた。

 がやがやと賑やかな騒音の中で、まるで世界が終わるような悲しみの声が、エルの耳にこびりついた。母親は、困った顔で男の子を慰めている。