「場所を特定してもらって、伝えてもらうんだよ。仮想空間内の見取り図が向こうとこっちに、同時に反映されるようになっているから、僕達は自分たちの現在地から支柱までの距離を見て、探す的を絞るという感じかな。本来は地図の役目を果たしてくれるらしいマップも、今は真っ黒だからね。おおよその距離を計算できるナビ、みたいな感じかな」
「ふうん」

 その時、エルは身体が浮くような感覚を覚えた。

 途端に風が強く巻き起こり、服や髪を躍らせ、様々な色のついた光りが目まぐるしく視界を回った。光りは水の中の気泡のように激しく飛び交い、同時に、脳が激しく揺さぶられるような衝撃を受けた。

 息が苦しい。――エルは、眩しさに目を瞑った。

 しかし、数秒も掛からずに風が止んで突然視界が開けた。世界の色や空気が唐突に変化し、急降下と急上昇した後のように頭の奥がグラリとした。

 そろりと辺りを窺うように目を開けたエルは、鼻先に舞い落ちる桃色の花弁に気付いて、目を丸くした。