今度は、はっきりと少女の声であるという印象を受けた。ふわり、と風に揺れる長い金髪が、残像のように振り返り様にエルの脳裏にこびりついたのだが――


「何か、お探しか?」


 不意に話しかけられ、エルは驚いた。いつの間にか、道の脇に僧侶が立っていたのだ。

 僧侶らしい格好をしたその男は、笠を被っているので顔は見えなかったが、背丈や体格、声の感じからすると若い男のようだった。

 なぜ俺に声を掛けたのだろうか。

 辺りを見回し、エルはようやく納得した。人の数が正午を過ぎて少なくなっている事に気付いた。

「えぇっと、寄付が目的なら他を当たって欲しいんだけど……」
「探し物をしているようだから、声を掛けた」

 僧侶は、やんわりと答えた。彼は両手を袖に入れて立っている。

 エルはしばらく考え、彼に質問してみた。

「猫と同伴出来るお店を探しているんだけど、心当たりはありませんか?」
「場所によってはあるのだろうが、生憎、私はここの土地を知らない」
「なんだ、知らないのか」

 エルは、途端に落胆を覚えた。バッグから顔を出していたクロエが、少々呆れた目を僧侶へ向ける。